もう何十ン年ぶりになるんだろう、11月の札幌の土を踏むのは。
もちろん毎年帰省はしているのです。しかし帰省ですから、盆、正月、年度末など切れのいい時期になりがちです。11月は理由がなければ選ばれにくい。
このコロナのことで目処が立たずに、今年は11月にホテル泊で変則的な帰省をすることになったのです。
紅葉が過ぎ、季節の彩りのカードをほぼ使い果たして、雪交じりの雨の日などは、雪が積もりきって解けなくなった根雪の真冬より寒さがしみてくる、晩秋。
北海道、行くならいつがいい? と人に聞かれると、私は、紅葉終わった11月からはちょっとね、根雪になってからは意外といいよ、なんて答えたりしますし。
それでも暮らして季節に日々向き合い、落ちきって色をほとんど失った落ち葉をゆっくり踏みしめ歩くときに、ふと何かほっとするような明るい心持ちが訪れることもあったのです。
あれは何だったのかしら、11月に帰ればそんな思いが甦る瞬間もあるだろうかと軽い期待を抱いていました。
けれどこんな数日の、ホテル泊の慌ただしい帰省に、故郷はそんな奥の顔を見せてはくれなかったのです。
足を伸ばした神威岬で、ブリザード並みの横風をぶち当てられたのが故郷のプレゼントでしょうか。
積丹半島は若い時分に毎年泳ぎに行ったり、キャンプなどで訪れていました。今回生まれてはじめて、晩秋に、海岸線をずっと辿る機会に恵まれたのです。
天気はほとんど雲に覆われ風強く雨が降ったり止んだり、時折ちらっと雲が切れて光がのぞくくらい。
波が大小様々にごつごつした勇壮な岩に砕けて、木田金次郎の絵のようでした。
若い頃晩秋にはよく聴いていた曲。今聴くと少し感傷的かなあとも思いますがやはり好きな曲です。