こころ、てくてく……表現するこころ

漫画家 海山かのんが、表現する人々のことなど、つぶやいたりマンガに描いたりします。

宮沢賢治と桜

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「桜の花が日に照ると

        どこか蛙の卵のやうだ 」

 

宮沢賢治の『 春と修羅 』第ニ集の『春』という詩にこんな一節があります。

 

たいへん私にとってインパクトのある例えで、桜が満開になると必ず思い浮かべてしまいます。私には、子供のころ池などにある蛙の卵を時々持ち帰り、オタマジャクシにかえして喜んだりした思い出があるからです。

 

ゼラチン質の、命を一杯含んだプリプリとしたあの独特な感じ。あれを桜の花の集合体に例えるのは絶妙で、なんとなくほのかな悪意も感じます。

 

桜といえば単純に美しい、有り難いものとして喜び騒ぐ多数の人々にたいしての、でしょうか。

 

賢治の例えが真っ先に来ないように対抗する例えを作ろうとしてみたりしますが、なかなか賢治には勝てないでいます。

 

賢治は、自分の創作をよく弟妹に読んで聞かせていたようなので、この蛙の卵の例えをいたずらっぽく妹に披露したかもしれません。そんな姿を想像してイラストにしました。

 

 

関東は満開の桜が低温続きで長持ちしました。私も今年は充分に盛りを堪能できたと思います。昨日は週明け月曜でしたが、桜並木は週末歩いた人々のゴミが山盛り。ぴかぴかしたカラス達がダイブしていました。ピークは過ぎましたが、もう少し名残りの桜を楽しめそうです。

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お絵かきソフトで写真にこんな風にフィルターをかけて加工できるんですね。面白い! 使用したのはアイビスペイントです。上のほうのイラストはクリップスタジオ。素材頼みだなあ…

 

ごぎのごぎおほん…宮沢賢治のふくろう

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「ごぎのごぎおほん」

宮沢賢治の『かしはばやしの夜』の一節で、ふくろうの声なんですが、一回読んだら忘れられませんでした。

 

ふくろうの鳴き声とはとても思えない。

おほん、は許容範囲ですが、どう聴けば、ごぎのごぎ、になるのか。

 

そう疑問に思いつつ、どうにもできず数十年放置。

 

賢治漫画を描くようになって、色々未読のお話を読んでいるうちに、『よく利く薬とえらい薬』という話の中に、また「ゴギノゴギオホン」とふくろうの鳴くシーンが出てきました。

 

やはり賢治は、ふくろうの鳴き声は、ゴギノゴギオホンと表現したいようです。

 

実際ふくろうはどう鳴くのか?

つきつめて関心を持ったことはなかったのです。

幸い今は検索時代ですから、ふくろうの鳴き声の動画を探してみました。

 

結果、ふくろうの鳴き声が実に多様であることを知りました。猫みたいなもの、犬のようにワン!というもの、ジージーほとんど雑音、なもの。

 

しかし、中には「おやっ?」と思うものもあったのです。「 おほん、ギギギギ」と鳴くふくろうの動画がありました。喉でギギギというところが、聞きようによっては、ゴギノゴギ、と言えないこともないな、という気がしました。

こころてくてく、のこころは何…アイビスペイントで作成

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こころって何でしょうか?

…とこのブログを始めた頃書いたことがあります。

 

少なくとも、私はどういう意味合いでこころと言っているんだろうか。題名に持ってきている以上少しは考えた方がいいように思うようになったのです。

 

今考えられる精一杯は、今まで自分が生きてきた機縁によって、脳と体が編み上げた、感情、思考、意志 の傾向、クセの総体、とでも言えるでしょうか。

 

これが、内外の刺激にさまざまな色で反応しつつ忙しく点滅して日々を過ごしているのかもしれません。

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帰省中でiPhoneしか使えないので、クリスタ抜きでイラスト作成しました。なかなか線が引きずらいので、ほとんど素材だけでつくっています。活躍するのはアイビスペイント。けっこう気楽で楽しいです。

雪解けの街と安室透バス

雪国のはずである実家に用事で訪れています、が

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早すぎです。表通りはほとんど溶けてしまいました。水路脇の土手に、ぽこぽこふきのとうが出てきています。それって4月はじめくらいだったのでは…?

 

それはさておき、二十歳過ぎのころは雪解けが始まると何ともざわざわした焦りにつつまれたものです。雪が大変、と言いつつ何となく安定した気持ちで過ごす1、2月が過ぎ、大地が変貌する3、4月には、自分も一皮むけなくては!と無意識に心を駆り立てていたのでしょう。

 

年の功か鈍くなったのか最近は、季節の目覚めと自分の抱いている様々なことにはずいっと距離があるような気がします。

 

バスターミナルにこんなバスが入ってきておやと思いました。

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映画を観に行ったのは6月、もう9ヶ月くらい経つのか…

 

 

少女のペン画……インクを買ったので

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山葡萄色、深海色、土筆(つくし)色、と言葉にすると、新鮮なイメージが湧く心地がします。エンジ、ブルーグレー、焦茶、とつい慣れた単語で済ませてしまうのですが。

 

先日、雑誌『MIZUTAMA』のメンバー達で、久が原にあるとても素敵な文具のお店、『アサヒヤ紙文具店』を取材させていただきました。そのさいにパイロットのインク、「色彩雫」シリーズを3色買ったのです。

 

早速この3色を使いたくて、最近はiPadに押されてあまり出番のない愛用ペン軸を引っ張りだし、写真を見ながら描きました。

 

下描きなし、修正不可の一発描きなので、失敗してもとにかく突き進んで出来上がらせます。もっと本物はかわいいんだけれど。iPadならしつこく描き直しを繰り返すでしょう。

 

でも不思議に充実した時間でした。ペンが紙にシャカシャカ接触する音とともに線が積み重なる、その感触空間はとても贅沢に思われました。f:id:raspberrychoco:20190305081204j:image

 

そして、ン10年ぶりに命を吹き返した私の万年筆です。深海色のインクを呑み込んで満足気。乾ききってカートリッジが貼りついて取れなくなってしまった、大昔に入学祝いに貰った普通の万年筆。修理に出す必要があると思い込んでいましたが、ぬるま湯に3日つけたらあっさり復活しました。嬉しいことです。

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アサヒヤ紙文具店のホームページはこちらです。ここを訪れた人はきっと紙にペンで書くことのワクワク感に捕らえられるでしょう。

文房具通販のアサヒヤ紙文具店 こだわり文房具のご紹介と販売

 

 

うさぎの足には肉球がない……虹色鉛筆でスケッチ

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「猫の後ろ足ってうさぎのに似てるな〜」

かつて初めて野良の子猫を保護して、育てている時こう思いました。でもうさぎをよく知っていたわけではなく、何となくそう感じたのです。かかとから足先までが長くて、そこを地面につけてジャンプするところ。

 

先日訪問した先にうさぎが飼われていて、思わず足に注目! スケッチさせていただきました。

 

すごく腿の筋肉が発達していて、かかとから足先まで距離がある。やっぱり猫と似てる。でもなんか違う。そうだ、「 肉球がない!」

 

私はこのときまで、うさぎに肉球がないことを知りませんでした。足の裏はみっしりとふかふかな毛に覆われているばかりです。

 

帰宅後調べてみたところ、数種の例外はあるものの、うさぎに肉球は無いようです。

 

肉球は、基本的には肉食の動物が、足音を立てずに獲物に近づくためなどにあるようで、逃げるほうのうさぎには必要がないらしいです。

 

 

最近のスケッチで重宝しているのはこの鉛筆です。正式な名前は思い出せませんが、虹色鉛筆と呼んでいます。

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うまく先端にピントを合わせることができませんが、こんなふうに一本の芯に色がぎっしり同居しています。隣り合う色をよく考えて配置してあって、混色しつつ微妙な色をつくりながらスケッチしていきます。赤と青を混ぜて紫をつくるのって難しい!

 

今のところデジタルのペンツールではこの機能を見たことはありませんが、いつかできるようになってしまうのでしょうか。

 

 

 

宮沢賢治と保阪嘉内…ETV 特集

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今、宮沢賢治心友の保阪嘉内が同級生ならこんなふうに撮れるかもしれません。

 

長いこと表舞台に登場することの少なかった賢治と嘉内のいきさつですが、私の記憶では、本格的にテレビ番組で特集されたのを観たのは初めてです。( ETV 特集 「宮沢賢治 銀河への旅〜慟哭の愛と祈り〜)

 

賢治を演じた俳優さんはけっこうイメージに合っていたと思います。あとで家族に聞いたことによると、お笑いの人なんですね。

 

番組の元になった、今野勉氏の著書『宮沢賢治の真実ー修羅を生きた詩人』も読んでみました。

 

全体的に、二人の魂の求め合いに関して、菅原千恵子氏著の『宮沢賢治の青春』の考察との近さを感じました。

 

それは、2人の共鳴を「恋」の視点から描いているところです。

 

私の考えでは、それはあってもいいと思いますが、私は他の視点を前衛に持ってきています。

 

それは、賢治が希求する「善き道」を共に進む同伴者として嘉内を強く求め、設定していたということです。

 

それだけ賢治にとっての嘉内は、思想、芸術、宗教などあらゆる面で、他の人では得られない、共感や意気投合をもたらしてくれる存在だったのだと思います。

 

ケンタウルス座と土星との関係は見聞きしたことがなく、この番組ではじめて知りました。興味深かったです。

 

私は、賢治がケンタウルス座に注目していたのは、α星が太陽に一番近い恒星であり、二重星であること、さらにずっと遠くから見れば太陽とα星が双子に見えるであろうこと、その理由かなと思っていたので、他の見方もあるのだと知りました。さらに自分なりに調べてみたくなりました。

 

 

雑誌『MIZUTAMA』に掲載していただいている私の宮沢賢治マンガ、「カムパネルラのシルエット」(宮沢賢治ってどんな人? 第4話) でもちょうど嘉内を描いているところです。『銀河鉄道の夜』にからめて、彼は賢治にとってどんな存在だったのか、キャラクター達が考察していきます。

 

教養豊かで才能幅広く、骨太い魅力を持った嘉内を伝えられたら幸いです。

 

雑誌『MIZUTAMA』の通販が開始されました。ご案内はこちらです。

 

ちなみに、賢治と嘉内の当時の写真はこれです。手前の頬杖ついているのが嘉内。奥の中央が賢治です。

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嘉内に関連した過去記事もよろしければどうぞ。