「はぐみをしてあげて下さいね。」
ずいぶん前、近場の寄せ植え教室で、シクラメンのお手入れをそう教わりました。
「はぐみ」とはシクラメンの葉を外にやさしくひっぱりながら、花茎を真ん中に持ってくることです。
こうすることで花茎が葉の陰になって生育が損なわれたり、ばらばらに伸びたりせず、お店で見るような美しい形姿に育ちます。
講習が終わり、お土産の自分でこしらえた寄せ植えを抱いて、「はぐみ」ということばを口の中で転がしながら帰りました。
以来、なんだか「はぐみ」ということばが気に入り、花壇でうちのガーデンシクラメンの世話をするときに「さあ、はぐみをしようね。」なんて話しかけたりしました。
「はぐくむ」ということばに通じるものがあるように感じましたし、「Hug」 という英語も連想して、何かほんわかとする心地がしたのです。
そしてある日、何気なくいろいろ花のことを調べていて、シクラメンのことが詳しくのっている情報に辿り着き、「葉組み」という文字が目に入りました。
そ、そうですか。葉を組む、その通りですよね。
プシューと音を立てて、ことだまが抜けていってしまいました。いや、私が妄想を膨らませていただけで、「葉組み」 に罪はないのですが。
それでも「はぐみ」が、ただの園芸用語に分類されてしまった気がして、勝手に残念な思いにひたったものでした。
「はぐみ」をするたびにその事を思います。