そろそろ年賀状の絵柄を考える時期ですね。
年賀状という習慣も風前の灯火です。私の子供たちもほとんど書いていないようですし、私と夫の分も順調に?減りつつあります。
それでも私のように怠け者の絵描きにとっては、干支を口実に年替わりで、想像上のものも含む12種類の動物を描く機会があるのは、ありがたい事でもあります。
なのでこの先細りの文化にもうすこし付き合おうかと思っている次第です。
来年の干支は寅。けっこう敷居が高い。ギャグっぽくおちゃらけた図案にしようか、大人っぽいカッコいい虎にしようか。
いずれにしても、いくらか虎をクロッキーしてみて、決めようと思います。
ところで冒頭の絵、何に見えますか?
私には、何かピューマのようなネコ科の野生動物、でもなんか弱々しいし? という印象でした。
正解は虎のようです。
この絵は江戸時代の禅僧かつ画僧、風外本高(1779〜1847)の『涅槃図』の一部です。
考えてみれば、この頃の日本の絵描きは虎をナマで見る機会はまずなかったでしょう。正確な図鑑も入手できなかったと思います。
手に入ったとしても大陸から渡ってきた絵や、寺にあったもの、先輩画僧に見せてもらったもの、他の画家の絵など。
あとは、どうやら猫に似てるらしいよ、と伝え聞いたとか、そんなものではないかと想像します。
改めてさきの絵を見ると、どうも猫を見ながら描いたような印象があります。こんなもんかなぁ?とでも言いながら筆を運んだのでしょうか。後ろにはラクダのようなものがいますがこれもかなり微妙です。
『涅槃図』ですから、お釈迦様の臨終に集まって、悲しみに暮れる人々や動物たちなどが描かれています。それにしてもなんだか描きっぷりが自信なさげで微笑ましいのです。
それでも注文があったからなのか、自分の寺で必要になったのか、風外本高はがんばって釈迦のもとに集まったとされるあらゆる動物を描こうとしたのでしょう。
たぶんよく目にして描き慣れていると思われるニワトリ、蛙、牛などは線にも迷いがなく洗練された感じで描かれていますが、
ゾウやワニ、ドラゴン?では、「何だか分からんなあ、もうこんなんでいいかなぁ?」というボヤきが聞こえそうです。でもまあ、他に正解を知る人もいなかったでしょうから、文句もなかったと思われます。
次の動物に至っては、わかってもらうことを諦めているようにも見えます。
さて、涅槃図の話題はこの辺にして、今年の年賀状の寅をどんなのにするか、です。
現代の私が虎を描くならば、画像検索で虎の写真やイラスト、動画、賀状のフリーの図案など、いくらでも出て来ます。
動物園に行けばナマ虎も拝めるでしょう。
とりあえず、録画してあった岩合光昭の動物園の番組に出ているアムール虎を何ポーズかクロッキーしました。
その印象を生かせたかは微妙ですが、ちょっと習作してみました。